Bowen Family Systems Theory

ボウエンの基礎理論

精神科医でありボウエン家族療法理論を提唱したボウエンは、1940年代後半にクリニックで精神分裂病(統合失調症)の研究を始め、そこで患者とその家族関係に共通の行動様式があることに気が付いた。ボウエンの理論は自然分類に基づいており、それがまた特徴でもある。多くの家族療法の理論はサイバネティックス論、システム論、そしてコミュニケーション理論を基にしており、それらは現在の家族のあり方に最も注目するものである。他の家族療法理論が今のこの場にいる家族のありかたについてのみ着目するという立場を治療室で取るのに対して、ボウエンの理論は祖父母の代などの、過去の家族関係にも目を向ける。なぜなら、ボウエンはひとつの家族の中には二種類のまったく別のシステムが働いており、それらは“家族関係のシステム”と“感情・情緒のシステム”であると主張しているからである。[1]

 

ボウエンは家族を“多世代間にわたる人間関係のネットワーク”とみなし、特に母―子の関係に注目した。さらに、彼は人間というのは想像しているよりはるかに相互依存的で情緒に基づく存在であると考えた。ボウエンは、“人間関係は拮抗する二つの根源的な生き方がある”として、「個体としての存在」と「共同体としての存在」をあげ、それが家族を情緒的なシステムたらしめているとしている[2]、と仮定している。個体としての存在と共同体としての存在の概念として、個の確立(differentiation of self), 感情的三者間関係 (emotional triangles), 核家族内情緒過程(nuclear family emotional process), そして多世代間伝承過程 (multigenerational transmission process) などがあげられる。[3] 家族内での感情の過程を説明するのに、様々な心理療法が二者関係として、クライエントとその家族を観察してきているが、ボウエンは二者関係よりむしろ三者関係で捉えながら、家族間のつながり、感情的三者間関係を理解することが大切であると主張している。カーとボウエンは

 

     感情が、他の人間関係ともつながっていることを忘れて、感情の過程をひとつの人間関係のなかだけで適切に説明するのは、実際、不可能である。ひとつの人間関係は三者関係成立の過程を通して、他の人間関係とも絡みあっている…三者間関係は感情システムの基本分子である[4]

 

と述べている。ボウエンは不安感を感情システムの中心概念として捉え、人間関係、薬物使用、人格特性、そして信念などはその不安感と接着しやすい重要な要素として述べている。彼は家族内のひとりの人間の不安感は、その家族内に伝染するだけではなく、世代を超えても、なお伝承し続けると考えた。これをボウエンは多世代間伝承過程 (multigenerational transmission process) と呼んでいる。



[1] Michael E. Kerr and Murray Bowen, Family Evaluation (NY: Norton,1988), 11.

[2] Michael P. Nichols and Richard C. Schwartz, Family Therapy: Concepts and Methods (MA: Pearson, 2004), 119, tr. by Yoshida, M.

[3] Kerr & Bowen, 1988; Nichols & Schwarz, 2004.

 

 

原著:Marie Yoshida, Pacific World Journal (2008), 65-69, tr. by Yoshida, M.

 

 

 

ボウエンの『家族』の見方

ボウエンが、精神分裂病(今の統合失調症)の子供を治療する過程で、親子関係の在り方が影響しているとの仮説を打ち出したのには、”治療室の外”での親子のコミュニケーションを仔細に観察したところから始まります。

待合室における、いろいろな親と子のコミュニケーションのやり取りを観察しているうちに、精神分裂病の親子関係に特有のパターンを見出していくのです。

 

のちにボウエンは、この『診察室外の臨床』で得た情報を基に、ある仮説を立て理論化していきます。

 

その仮説とは、家族の中には、以下の2つの異なる統治システムがあるということです。

 

1.家族関係としてのシステム

2.感情・情緒のシステム

 

 

 

  1. 家族関係のシステムとは

家族関係としてのシステムでは、親は大人、子供は子供となります。つまり年功序列です。

 

親は大人 → 子供を保護できる・ 子供を教育できる・ 子供より社会を知っている・ 大人は子供の世話をできる・ 面倒を見ている・・・など

 

つまり、早い話が、親(年長者)は、その家族の中で、生きて行く上で必要な決定権などのすべての主導権を握っているというものです。これは、たとえ『親としては、子供の好きなようにさせている』という親がいたとしても、好きなようにさせるという段階で、親の優位性・上下関係性を示すものです。決して『平等』ではないのです。

 

誤解していただきたくないのは、この優位性は、別に悪いことでもなんでもありません。この世の中で生き残っていくために、より力のある者が、弱い者を守り、その中で上下関係が出来るのは、生物としては当たり前(自然)の話であり、必要な事でもあるからです。

 

この、”生物として”というところの発想が、ボウエンが自論を、『Natural systems theory(自然システム論)』 と位置づける所以です。ボウエンは、人間というものを、あくまでもこの世に存在する多くの生物の一種として見ているのです。

  

 

 

  2. 感情・情緒のシステムとは

  Under constraction (工事中)

<m(__)m>

ボウエン家族システム理論の基礎概念

ボウエン家族システム理論にはいくつかの基礎概念があります。アメリカ、ワシントンD・Cに、ボウエンセンターという、ボウエン家族システム理論の研究施設兼クリニックがあります。ボウエン理論を専門に学び、さらにインターンとして、ボウエン理論の臨床をすることもできます。そのセンターのHPに、8つの基礎概念がのっています。(HPのアドレスはリンクのページ)

 

 

1.Triangles 

2.Differentiation of Self 

3.Emotional Cutoff

4.Multigenerational Transmission Process

5.Family Projectiohn Process

6.Nuclear Family Emotional System

7.Sibling Positiohn

8.Societal Emotional Process

 

これから少しずつ、このHPで説明していきたいと思います。